後輩に「これを任せよう」と決めるとき、本人のスキルや性格に応じてそのたびに判断を変える必要があり、一律の型には当てはめられないと痛感したこと。そして、育成をしている姿そのものが、実は自分自身の人事評価にも直結しているという気づき。この記事では、その2つをまとめて書きます。
「後輩 仕事 任せ方」「部下育成 コツ」などで検索すると、相手の成長を促すための任せ方のコツを解説する記事はたくさん見つかります。ただ、その多くは任せる相手の成長という視点にとどまっており、育成する側である自分自身の評価にどう跳ね返ってくるのかという実務的な視点まで書かれた記事はほとんど見かけませんでした。
私はSIer(システムエンジニア)としてSE〜PMの実務を数年経験したのち、ITコンサルタントへ転職しました。入社から数年が経った頃、採用面接官と後輩育成(OJT)を担当する機会をいただきましたが、この記事で書く数字やエピソードの細部は、個人が特定されないよう記事ごとに調整しています。
この記事でわかること
- 後輩に何を任せるかを、なぜ一律の型で判断できないのか
- 実際に任せる範囲を決めるときに意識している判断の切り口
- 育成する姿自体が、自分の評価にどうつながっているのか
「後輩に何を任せるか」を一律の型で決められないと気づいた理由
後輩育成を任されるようになって最初にぶつかったのは、後輩ごとにつまずくポイントも、任せてよい範囲もまったく違うという事実でした。ある後輩には少し難しいタスクを渡した方が伸びる一方、別の後輩に同じ渡し方をすると、自信を失わせてしまうこともあります。
「型」として一度覚えれば済む話ではなく、本人のスキルの伸び方や志向を見ながら、都度さじ加減を変える必要があるという点が、想像していた以上に難しいポイントでした。
特に、新卒でコンサルに入社した後輩の場合は、SIer実務の経験がないまま日々の案件に入ってきます。私がSIer時代に感じていた「受託開発という構造の中での葛藤」や「現場の技術キャッチアップの大変さ」といった感覚そのものを、そもそも持っていません。
そのため、教える内容だけでなく、前提としてどこまで共有しておくべきかという判断も、後輩の経歴によって毎回変わってきます。
以前、感覚的にできることを言語化して伝える難しさについて書いたことがありますが、あの記事が「教え方そのもの」の難しさだとすれば、今回書きたいのは、その一段手前にある「そもそも何を、どこまで任せるか」という采配の難しさです。教え方をどれだけ磨いても、任せる範囲の見極めを誤れば、育成はうまく回りません。
実際にどう「任せる範囲」を判断しているか
任せる範囲を決めるときに、毎回同じように考えていることがいくつかあります。特別なフレームワークがあるわけではなく、後輩と接する中で自然と整理されていった判断の切り口です。
後輩に任せる範囲を決めるときに意識している3つの切り口
- 過去に似たタスクで、どこまで自走できていたか(結果ではなくプロセスを振り返る)
- もし失敗した場合に、案件全体やクライアントへの影響がどこまで広がるタスクか
- 本人が今、成長のためにどのくらい難易度の高いタスクを望んでいるか
この3つをセットで考えるようにしてから、「任せすぎて本人を追い詰めてしまう」「任せなさすぎて成長の機会を奪う」という両極端を避けやすくなったと感じています。
例えば、過去に似たタスクで自走できていた後輩には、あえて途中経過の確認頻度を減らし、詰まった時だけ相談に来てもらう形にすることがあります。逆に、自走の実績がまだ少ない後輩には、失敗時の影響が小さいタスクを選びながら、こまめに壁打ちの時間を取るようにしています。同じ「任せる」でも、関わり方の密度をここまで変える必要があるとは、担当する前は想像していませんでした。
育成する姿自体が、自分の評価に直結すると気づいた話
後輩育成を担当するようになって一番意外だったのは、後輩に何をどう任せているか、どんなふうに育てているかという采配そのものが、自分自身の評価対象として見られているという事実でした。
SIer時代は、後輩指導はあくまで「本業の合間にやる付随的な仕事」という位置づけが強く、指導の巧拙が自分の評価に直結する感覚はあまりありませんでした。コンサルに転職してからは、後輩育成も「組織にどう貢献しているか」を測る要素の一つとして扱われることに気づき、当初は戸惑いました。
良かれと思って手取り足取り教えすぎれば、本人の成長機会を奪っていると受け取られかねません。逆に突き放しすぎれば、育成が機能していないと見なされます。「教える内容」だけでなく「教え方の采配そのもの」まで見られているという感覚は、後輩指導を任されて初めて実感した部分でした。
以前、コンサルの評価は「黙って成果を出していれば見てもらえる」というSIer時代の感覚のままでは通用しないと痛感した経験を書きましたが、後輩育成の場面はその延長線上にあると感じています。育成そのものの中身に加えて、自分がどう育成に向き合っているかを、上司や周囲に対しても自分から見える形にしていく必要があるという点は、渦中にいるときにはなかなか気づけませんでした。
これからコンサルを目指す方へ
後輩育成の采配や、それが評価にどうつながるかという話は、コンサルに転職してから急に身につくものではありません。今の仕事で後輩や部下がいる方なら、「この人に何を任せ、どこまで見守るか」を意識的に言語化してみることが、そのままコンサル転職後にも生きる練習になります。
感覚的にできることを後輩にどう言語化して伝えるかという、教え方そのものの難しさについては後輩指導で気づいた「感覚でできること」を教える難しさ|採用面接官・育成担当としての一次体験にまとめています。あわせて、コンサルで求められるスキル・資格全般についてはITコンサルで求められるスキル・資格、実際に感じたことを全部書くでも整理しているので、気になるテーマから読んでみてください。
自分がこれまで積み上げてきた経験が、ITコンサルの選考でどう評価されるのか一人で判断がつかない場合は、まず情報収集として転職エージェントの面談を受けてみるのも一つの手だと思います。後輩育成のような実務の采配は入社後に身についていく部分も多いので、まずは今の経験がどう映るのかを聞いてみるところから始めてみてください。
後輩に何を任せるかという小さな判断の積み重ねが、実は自分自身の評価にもつながっている。そのことを知っておくだけで、入社後の戸惑いは少し減らせるはずです。


