新卒でSIer(システムエンジニア職)に入社してから数年の間、私にはずっと拭えない感覚がありました。それは「自分は本当に成長できているのだろうか」という漠然とした不安です。
目の前の仕事はこなせているはずなのに、去年の自分と今の自分で何がどう変わったのか、うまく言葉にできない。周囲の同期がキャリアの話で盛り上がっているのを聞くたびに、自分だけ置いていかれているような焦りを感じることもありました。
同じような悩みを持つ後輩や同僚を何人も見てきましたし、当時の自分もまさにその一人でした。この記事では、その不安の正体と、当時は気づけなかった「成長のかたち」について、実体験をもとに書いていきます。
この記事でわかること
- SIer若手時代に感じていた「成長できているのか分からない」不安の中身
- 成長の実感が「後から振り返って」初めて分かる理由
- 不安に飲まれないためにやれること
同じような作業の繰り返しに感じていた違和感
当時の不安の根っこにあったのは、日々の業務が似たような作業の繰り返しに感じられることでした。担当する工程や扱う技術要素はプロジェクトによって多少変わるものの、要件を整理し、設計に落とし込み、テストで潰し込むという大枠のサイクル自体は毎回似たような形をしています。
「去年もこれをやっていた気がする」という感覚が拭えないまま、目に見える形で自分の力が伸びているという実感を持てずにいました。何か大きな失敗をしたわけでも、評価が悪かったわけでもないのに、漠然とした焦りだけが積み重なっていく感覚でした。
検索しても出てくるのは「多重下請け構造」の話ばかりだった
当時、同じような悩みを解消したくて色々と調べてみたことがあります。出てくる情報の多くは、SIerの多重下請け構造が原因で、自分の仕事が最終的に誰にどう役立っているのか見えにくい、ユーザーからの直接的なフィードバックを得る機会が少ない、といった構造的な問題を指摘するものでした。
たしかにそれは的外れではないと思います。ただ、当時の自分の不安の正体は、構造の問題というより、もっと個人的な「実感の持てなさ」だったように振り返って感じます。
同じ会社・同じチームの中でも、成長を実感できている人とできていない人がいたからです。原因を組織構造だけに求めてしまうと、見えなくなるものがあると思っています。
実は「今」ではなく「後から振り返って」初めて分かる成長がある
今振り返って一番強く思うのは、成長の実感というのは、渦中にいる本人にはなかなか見えにくいものだということです。私自身、当時は分からない論点を振られると手が止まってしまう状態が長く続いていましたが、年次を重ねて改めて振り返ると、いつの間にか、正解が分からない前提でもある程度の方向性を自分なりに想像しながら手を動かせるようになっていました。
この変化に自分で気づいたのは、実はその渦中ではなく、しばらく経ってからのことです。成長を「今この瞬間に実感できるもの」だと期待しすぎると、実際には起きている変化を見落としてしまうのではないかと思います。
比較する相手を間違えていた、という気づき
もう一つ、当時の自分がやってしまっていた失敗だと思うのは、比較する相手を間違えていたことです。周囲の同期や先輩と自分を比べて、「あの人はもうあんなことができているのに、自分はまだこの程度か」という焦り方をしていました。
ですが、本来比べるべきなのは他人ではなく、半年前・一年前の自分だったはずです。似たような作業の繰り返しに見えていた日々の中でも、扱える業務の範囲は少しずつ広がっていましたし、初めて聞いた専門用語に戸惑っていた頃と比べれば、理解のスピードも確実に上がっていました。
当時はそうした地味な変化を「成長」としてカウントできず、他人との差分ばかりに目が向いていたのだと思います。
障害対応の場面で痛感した、当時の自分の実力不足
一方で、成長できていないという不安が単なる思い込みではなく、現実の実力不足として突きつけられる瞬間もありました。私の場合、それが最も色濃く出たのは、平常時の学習不足そのものよりも、本番環境で障害・トラブルが発生した場面です。
限られた時間の中で原因を特定し対処しなければならない状況で、自分の知識・経験の浅さを痛感させられることが何度もありました。この時期の具体的な苦労と乗り越え方については、新卒SIer1〜3年目が辛いと感じる理由と乗り越え方でも書いていますので、あわせて読んでみてください。
特効薬があったわけではなく、地道にログや仕様書を読み込む勉強を積み重ねる以外に、実力不足を埋める方法はありませんでした。
当時は疲弊としか思えなかった経験が、後になって意味を持つこともある
「今の苦労が将来どう活きるか」は、その渦中では絶対に分かりません。似たような作業の繰り返しに思えていた日々の中にも、後から振り返れば地力になっていた経験は少なくないはずです。
実際、当時は本来の役割ではないはずのことまでやらされているという不満の方が強かった業務が、後になって別の場面で思わぬ形で役立った、という話も周囲でよく聞きます。特別な才能がなくても、地道な積み重ねが後から効いてくるという構図は、コンサル転職後、資料作成・議論についていけなかった私が克服のためにやったこと5つで書いた話とも通じるところがあります。
成長を実感できないことと、成長していないことは、必ずしもイコールではないというのが、今の自分から当時の自分に伝えたいことです。
「成長できていない」不安を強めていた3つの要因
- 同じような作業の繰り返しに感じられていた
- 周囲の同期や先輩と比較する相手を間違えていた
- 障害対応の場面で、現実の実力不足を突きつけられた
焦りだけで終わらせないために、視野を広げてみる
とはいえ、いつか分かるから気にしなくていい、というだけでは、目の前の焦りは解消されません。当時の自分に何かできることがあったとすれば、目の前の業務だけに視野を閉じず、意識的に周辺領域の情報に触れる習慣を持つことだったと思います。
今の担当業務の枠を超えて、隣接する技術領域やビジネス的な考え方に少しずつ触れておくと、同じ日々の作業の中にも前とは違う角度で見えてきたものに気づきやすくなります。
具体的には、担当している案件の技術要素だけに閉じず、少し隣接する分野の基礎を体系立てて学んでみる、というやり方が当時の自分には合っていたと思います。オンライン講座で学んでみるなど、業務の外側から知識の幅を広げてみるのも、当時の自分に勧めたい選択肢の一つです。
誰かと比べて自分の立ち位置を測るのではなく、以前の自分と比べてどれだけ理解が深まったかを基準にすると、小さな学びの積み重ねが、後から振り返ったときの成長の手触りとして確かに残っていくはずです。


