SIerからコンサルへの転職を考え始めた頃、実は最初から「コンサル以外は考えない」と決めていたわけではありませんでした。同じSIer業界の中で、もう少し条件の良い会社に移るという選択肢も、同時に本気で検討していた時期があります。
今回は、SIer(システムエンジニア)として働いていた私が、同じ業界内での転職とコンサルへの越境という二つの選択肢をどう比較し、最終的にどちらを選んだのかという一次体験を書いてみます。
この記事でわかること
- 同業界での転職を本気で検討していた理由
- 同業界転職とコンサル転職を、実際に並行して比較した過程
- 条件面では解決しなかった根本的な葛藤
「まずは同業界」も本気で検討していた理由
転職を考え始めた最初の頃に候補として浮かんだのは、実はコンサルではなく、同じSIer業界の中でのより条件の良い会社でした。理由は単純で、これまで積み上げてきた技術知識や業務ノウハウがそのまま通用し、選考のハードルも比較的低く感じられたからです。
年功序列的な評価制度の中で、実力に見合わない待遇に納得できない場面を何度も経験していたため、まずは同じ業界内で条件の良い環境に移るだけでも、状況はかなり改善するのではないかと考えていました。業界を変えずに待遇を上げるという選択肢は、リスクの小ささという点で最初はかなり魅力的に映りました。
正直に言うと、家族や周囲への説明のしやすさという意味でも、同業界転職の方が気は楽でした。「今と近い仕事をもう少し条件の良い会社でやる」という説明は聞き手にとっても想像しやすく、余計な心配をかけずに済むという打算もあったように思います。
同業界転職とコンサル転職、実際に比較した3つの軸
情報収集を進めていくうちに、二つの選択肢を比較する軸が自分の中でだんだんはっきりしてきました。特に大きかったのは、年収の伸び方・求められるスキルの変わり方・選考準備の負荷という3点です。
一つ目は年収の伸び方の違いです。同業界転職であれば、経験年数やポジションに応じた相場がある程度見えているため、年収の伸びを予測しやすい一方、上限もおのずと業界水準に収まりがちです。コンサルは成果次第で評価が大きく変動するため、伸びしろは大きいものの、当然下振れのリスクも伴います。
二つ目は求められるスキルの変わり方です。同業界であれば、これまでの技術的な知見をそのまま活かせる場面が多く、学び直しの負荷は小さく済みます。コンサルでは、資料の作り方や議論の進め方といった、それまであまり意識してこなかった部分から鍛え直す必要がありました。「今の延長線上でキャリアを伸ばすか、一段違う土俵に立つか」という違いが、この二つの選択肢の本質的な分かれ目だったと感じています。
三つ目は選考にかかる準備負荷です。同業界転職は職務経歴書も面接対策も、これまでの実務経験の延長で説明しやすい一方、コンサルの選考ではケース面接など、事前に相応の準備をしないと太刀打ちできない独自のハードルがありました。
両方の選考を並行して進めてみて見えたこと
実際には、どちらか一方に絞り込む前に、両方の選考をある程度並行して進めていました。同業界の求人で書類が通り面談が進む一方で、コンサルの選考ではケース面接で言葉に詰まる、という対照的な経験を同じ時期に味わったこともあります。
SIerからの転職を扱う記事の多くは、いわゆる「おすすめの転職先」を並べる形で情報を整理しています。ただ、実際に両方の選考を同時に進めながら比較検討した時の実感までは、あまり書かれていないように思います。片方の選考がうまくいっている時にもう片方で苦戦すると、自分の中の優先順位が揺らぐ瞬間があるということは、実際に並行して動いてみて初めて分かったことでした。
同業界の面談では自分の実績がそのまま評価されている手応えがあった一方、コンサルの選考では評価されている手応えが薄く、不安になる時期もありました。それでもコンサルの選考を降りなかったのは、単に評価されたいからではなく、次に書く根本的な理由があったからだと思います。
担当してくれたエージェントに、同業界とコンサルのどちらの選考も同時に進めていることを正直に伝えたところ、条件面だけでなく「なぜ両方を検討しているのか」という動機の部分まで一緒に整理してもらえたのも助けになりました。一人で悩んでいる時には見えていなかった優先順位が、話しながら少しずつ言語化されていった感覚があります。
同業界転職では解決しなかったはずの、根本的な葛藤
比較検討を重ねる中で、最終的に立ち返ったのは条件面の話ではありませんでした。SIer時代、自社の利益を優先せざるを得ない受託開発というビジネスモデルの中で、本当に顧客の悩みに寄り添えているのか、という葛藤を抱えながら働いていた時期があります。
同じ業界内で会社だけを変えたとしても、この構造自体は変わりません。むしろ同業界であるがゆえに、似たような商習慣・評価軸の中に留まり続けることになります。待遇や環境を変えることと、抱えていた葛藤の根本を変えることは、実は別の話だったのだと気づいたのが、最終的にコンサルを選んだ決め手でした。
特定の製品や技術に縛られず、顧客本位で提案できる立場に変わりたいという思いが、条件面の比較よりも最終的には重かったということです。同業界転職という「安全牌」を最後まで手放せずにいたら、この葛藤にはずっと向き合わずに済んでいたかもしれません。
判断の分かれ目
- リスクを抑えながら着実に条件を上げたいなら、同業界での転職
- 受託開発ゆえの「自社の利益を優先せざるを得ない」構造的な葛藤を変えたいなら、業界の外へ越境する
- どちらが正解ということはなく、両方の選考を並行して進めて比較する方法もある
結論、同じように迷っている人へ
ここまで書いてきた通り、同業界転職とコンサルへの越境、どちらが正解ということはないと思っています。リスクを抑えながら着実に条件を上げたいのであれば、同業界転職も十分に合理的な選択です。
一つだけ言えるとすれば、条件面の比較だけで決めようとすると、後になって「結局何が不満だったのか」が曖昧なまま次の転職を繰り返しかねないということです。同業界転職を選ぶにしても、コンサルへ越境するにしても、まずは自分が抱えている不満・葛藤が待遇の問題なのか、それとも仕事の構造そのものの問題なのかを切り分けて考えることをおすすめします。
私自身、この葛藤を言語化していく過程で転職を決断する直前の迷い・葛藤とどう向き合ったかやSIerからコンサルへの転職、決意するまでのリアルな心境の変化にも書いたので、あわせて読んでもらえると、決断までの流れがより立体的に伝わると思います。
同業界転職を含めて選択肢を広く比較したい場合、自分一人で情報を集めきるのは正直大変です。転職エージェントに相談しながら、同業界・異業種を含めた選択肢を一度整理してもらうのも、判断材料を増やす上で有効な手だと思います。


