業界を問わず横断してきたからこそ見える、コンサルタントとして通用するスキルの正体

複数の業界を横断してコンサルティング業務にあたるビジネスパーソンのイメージ キャリアパス

ITコンサルへの転職を考えるとき、多くの人が一度は「業界未経験のまま飛び込んで、本当にやっていけるのか」という不安を感じると思います。私自身、SIer(システムエンジニア)としてキャリアを積んだ後にコンサルへ転職しましたが、以来、金融・流通・公共など複数の業界を横断してプロジェクトに関わってきました。

今回は、その中で見えてきた、業界を問わず通用するスキルの正体について、実体験をもとに書いてみたいと思います。

この記事でわかること

  • 業界を横断して見えた、意思決定スタイルの違い
  • 業界を問わず共通して求められる力
  • 「同じやり方が全業界に通用する」と考える危うさ

業界ごとの「意思決定のスタイル」がまるで違うことに最初は戸惑った

複数業界を経験して最初に驚いたのは、業界ごとに意思決定の優先順位がまったく異なるという点でした。同じ「業務システムを刷新する」というテーマの案件でも、業界によって重視するポイントがまるで違ったのです。

金融系の案件では、とにかく品質と正確性が最優先されました。ミスが許されない領域であるため、スピードよりも堅牢性を重視する意思決定文化が根付いており、石橋を叩いて渡るという表現がそのまま当てはまる現場でした。

一方、流通系の案件では逆にスピード感が何より重視されました。市場の変化への対応力が競争力に直結するため、多少の粗さがあっても早く動くことの方が評価される場面が多くありました。

公共系の案件では、また別の難しさがありました。部門間(横)の連携が難しい組織構造であることが多く、追加予算も取りにくいため、当初の予算・計画の枠内でやりくりする前提の意思決定にならざるを得ない場面が目立ちました。

業界横断で通用していた力

  • 課題を構造化する力
  • 事前の知識より、素早くキャッチアップする姿勢
  • 業界に合わせて「型」を使い分ける力(型そのものより使い分け方)

それでも共通して求められていたのは「課題を構造化する力」だった

業界ごとの違いに戸惑いながらも、案件を重ねるうちに、実は業界を問わず共通して求められる力があることに気づきました。クライアントが漠然と抱えている問題を、要素に分解して構造化して見せる力です。

金融でも流通でも公共でも、クライアント自身が課題の全体像を正確に言語化できていないケースは少なくありませんでした。「何が問題なのかを一緒に定義するところから始める」姿勢そのものが、業界知識以上に価値を発揮する場面が多かったのです。

SIer時代に培った「あいまいな要望を要件に整理し、仕様に落とし込む」という経験は、この構造化のプロセスと地続きだったと感じています。技術的な文脈は違っても、あいまいなものを整理して形にする思考の型は、そのまま転用できました。

業界知識そのものより「素早くキャッチアップする姿勢」の方が重要だった

業界を横断していると、当然ながら個別の業界知識は、どの案件でも不足した状態からスタートすることになります。それでも大きな支障にならなかったのは、事前の知識量よりも、案件が始まってからのキャッチアップの速さと姿勢の方が重要だったからです。

具体的には、案件初期にクライアント側のキーマンへ業界特有の商習慣や専門用語を素直に質問し、短期間で最低限の共通言語を身につけることを徹底しました。分からないことを分からないと言える姿勢の方が、生半可な知識でごまかすより信頼を得やすいとも感じています。

業界知識は案件の中で追いつけるが、課題を構造化する力や素直にキャッチアップする姿勢は一朝一夕には身につかないという実感があり、選考で見られているのも、実はこちらの部分ではないかと思います。

この構造化の力は、選考の場でも意識して伝えるようにしていました。「〇〇業界の経験はありません」と正直に伝えたうえで、「ただし、あいまいな課題を要素に分解して整理する経験は積んできました」と続けることで、業界知識の不足を弱みのまま終わらせず、別の切り口で補って説明できたと思います。

一方で、「同じやり方が全業界に通用する」と考える危うさも痛感した

ここまで業界横断の強みを書いてきましたが、同時に注意しなければならないと感じたこともあります。ある業界でうまくいった提案の型を、そのまま別の業界に使い回してしまう「安易な汎用化」の危うさです。

実際、流通系案件でうまくいったスピード重視の進め方を、そのまま金融系の案件に持ち込みそうになり、現場の担当者から強い違和感を示された経験があります。品質と正確性が最優先される現場に、スピード優先の進め方を持ち込めば、信頼を損ないかねません。

業界を横断してきたからこそ得られる汎用的なスキルがある一方で、その業界・その顧客ごとに合わせて提案を調整する謙虚さを失ってはいけないと、この経験から学びました。

「業界を問わず通用するスキル」の正体は、型そのものより型の使い分け方だった

改めて振り返ると、業界を問わず通用していたのは、特定の業界に依存しない万能な「型」ではありませんでした。課題を構造化する力、素直にキャッチアップする姿勢、そして状況に応じて型を調整する判断力、この組み合わせを使い分ける力そのものだったと感じています。

業界知識がないことに不安を感じてコンサルへの転職を迷っている方もいると思いますが、業界知識は入社後に追いつける部分が大きく、むしろ土台になる思考の型と、素直に学ぶ姿勢の方が問われている、というのが複数業界を経験してきた実感です。

もちろん、業界特化型のコンサルタントとして一つの業界を深く掘り下げるキャリアにも別の強みがあり、どちらが正解というわけではありません。それでも、業界未経験であることを理由に最初から選択肢を狭めてしまうのは、少しもったいないと感じています。

SIer時代の経験がコンサルでどう評価されるかについてはSIerのSE経験はITコンサルでどう評価される?評価された点・されなかった点でも詳しく書いていますし、転職の経験の活かし方や選考対策全体についてはSIer(システムエンジニア)からITコンサルへ転職した私が、経験の活かし方・選考対策・年収相場をすべて書くもあわせて読んでみてください。

自分のこれまでの経験が、どんな業界・どんな案件で活かせるのかは、一人で判断するのが難しい面もあります。今の市場価値や、活かせるフィールドの選択肢をフラットに相談してみたい方は、こちらもあわせてチェックしてみてください。

タクマ

SIer(システムインテグレーター)でSE・プロジェクトマネージャーを経験したのち、IT/業務系コンサルティングファームへ転職。業界横断のプロジェクトに携わりながら、転職の実体験や入社後のギャップを発信しています。プライバシー保護のため、所属企業名・案件名など特定につながる情報は伏せています。

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