今の会社を辞めるとき、「円満に終わらせること」をどれくらい意識していますか。これからITコンサルへの転職を考えている方の中には、「一度飛び出したら、前の会社に戻ることなど二度とない」と思っている方も多いのではないでしょうか。転職はゴールであって、退職の仕方まで深く考えていない、という段階の方もいるかもしれません。
最近、数年前にコンサルティングファームへ転職した元同僚が、前職のSIer(システムエンジニア)へ”出戻り”したという話を聞きました。当事者ではなく、それを傍で見ていた立場だからこそ気づけたことがあり、自分自身の退職の仕方を改めて振り返るきっかけになりました。
「コンサル 出戻り」で検索すると、出戻りする本人がその気まずさをどう乗り越えるかという視点の記事や、コンサルを辞める一般的な理由を整理した記事が中心です。ただ、戻った本人ではなく、それを見ていた同僚の立場から、これから転職を考える人への教訓として書いたものはあまり見かけませんでした。この記事では、あくまで観察者としての視点から、その経緯と気づきを整理します。
この記事でわかること
- コンサルから前職のSIerへ出戻りする人が、実際にどんな経緯をたどるのか
- 出戻りが思っていたよりスムーズだった、IT業界特有の構造的な理由
- これから転職する前に、退職の仕方について具体的に意識しておきたいこと
同僚が”出戻り”を選んだ経緯
その同僚は、SIerでSEとして数年働いたあと、私と同じようにコンサルティングファームへ転職した人でした。案件を通じて幅広い業界の課題に触れる経験は積めていたようですが、あるタイミングで前職の元上司から声をかけられ、SIerへ戻ることを決めました。
辞めた理由は「コンサルが向いていなかった」というネガティブなものではなく、経験を積んだ先で、あらためて自分がやりたい仕事の形が見えてきたという、前向きな方向転換でした。もう一度、手触りのある開発・実装に近い立場で働きたくなった、という話を本人から聞きました。
本人の話を総合すると、コンサルのスピード感やプレッシャー自体が嫌になったわけではないようでした。前職時代の人間関係の心地よさや、腰を据えて一つのプロダクトに向き合う働き方への回帰願望のほうが大きかったようです。ネガティブな逃げ道としての出戻りではなく、複数の経験を積んだからこそ選べた、前向きな選択だったという点が印象的でした。
なぜ出戻りは、思っていたよりスムーズだったのか
正直、話を聞いた当初は「一度辞めた会社に戻るのは、気まずくないのだろうか」と感じました。ただ、実際の様子を見ていると、想像していたよりずっと自然な形で受け入れられていたのが印象的でした。
理由は、IT業界の構造にあります。SIerとコンサルティングファームは、開発パートナーとして協業したり、逆にコンサルが上流工程を支援したりする形で、退職後も仕事上で再び関わる場面が少なくありません(この構造については、SIer退職時は円満退社を徹底すべき理由についてまとめた記事でも詳しく触れています)。
IT業界は思っている以上に狭く、円満に退職していたかどうかが、後々の選択肢の広さを大きく左右します。その同僚も、退職時の引き継ぎや挨拶を丁寧に済ませていたからこそ、元上司から自然に声をかけてもらえたのだと思います。
出戻りを見て、自分の退職の仕方を振り返った
この一件をきっかけに、自分がSIerを退職したときのことを振り返りました。当時は「もう二度と関わることはないだろう」という前提で動いていた部分もありましたが、結果的にはいくつかの点を意識していたことが、後から見て良かったと感じています。
退職時に実際に意識していたこと
- 引き継ぎ資料を、自分が思う以上に丁寧に作り込み、後任が困らない状態を残すこと
- 退職理由を伝えるときは、不満や愚痴ではなく、次に進みたい方向性として前向きに説明すること
- 退職後も気軽に連絡を取れる関係を、上司や同僚の中で1〜2人でも残しておくこと
特別なことをしたわけではありません。ただ、こうした地道な積み重ねがあったからこそ、退職後も業界内で気持ちよく関わり続けられているのだと、同僚の出戻りを見て改めて実感しました。
これは退職の直前だけ気をつければいい話ではありません。今SIerで働いている段階からでも、日々の仕事の中で周囲との信頼関係を丁寧に積み重ねておくこと自体が、数年後の選択肢につながっていきます。転職前の今の仕事からでも始められることだと思います。
これから転職を考える方へ、退職の仕方が将来の選択肢を左右する
これからITコンサルへの転職を考えている方は、「今の会社とは縁が切れる」という前提で退職の準備をしてしまいがちです。ですが、SIerからコンサルへ転職したあとも、業界内で前職と関わる場面は意外と多く発生します。
今の退職の仕方は、数年後にどんな選択肢を持てるかに、静かに影響し続けます。転職活動そのものに気持ちが向いている今の段階でも、引き継ぎや関係の終え方まで含めて準備しておくことを、あらかじめ知っておいてください。
念のため付け加えておくと、この記事は「コンサルよりSIerのほうが良い」と言いたいわけではありません。私自身は今もコンサルとしての働き方に納得していますし、同僚の選択も、あくまで本人にとっての最適解だったという話です。大切なのは、どちらを選ぶにしても、退職の仕方次第で将来持てる選択肢の幅が変わってくるということです。
SIer社内のコンサル部門への異動を提案されても転職を選んだ理由についてはこちらの記事でも書いているので、キャリアの選択肢を考える上で参考にしてみてください。ITコンサルへの転職の全体像をまだ把握していない方は、まずこちらのピラー記事から読んでみることをおすすめします。
今の会社をどう辞めるべきか、転職後の業界内での立ち位置まで含めて相談したい場合、こうした悩みは一人で抱えるより、外部の視点(転職エージェント等)を早めに入れた方が結果的に近道になることが多いと感じています。まずは情報収集として、転職エージェントに登録して話を聞いてみるのも一つの方法です。


