中堅どころのSIerに新卒で入社し、SE(システムエンジニア)として数年、その後はPMとして中規模案件を主導する立場を数年経験したのち、30代でITコンサルタントへ転職しました。この記事では「SIerからITコンサルへの転職」というテーマを、経験の活かし方・選考対策・年収相場という3つの軸でまとめておこうと思います。
このテーマ自体は、すでに大手転職エージェント各社のメディアが手厚くカバーしています。ファームの種類ごとの比較や、年収レンジの一覧、選考対策のポイントなど、情報としての網羅性では正直かないません。
ただ、実際に自分がこのプロセスを経験してみて感じたのは、そうした整理された情報だけでは埋まらない「実感のズレ」がいくつもあったということです。この記事では、そのズレの部分を中心に書いていきます。
この記事でわかること
- SIerからITコンサルへの転職を「経験の活かし方・ファーム選び・選考・年収」の4点から整理
- エージェント記事では埋まらない「実感のズレ」の具体例
- 今の段階に合わせて、次に読むべき記事(ガイド付き)
「経験を言語化する」だけでは足りなかった、選考で本当に効いたもの
エージェント系メディアの多くは、SIer経験をコンサルの選考でアピールする際のポイントとして「経験を言語化すること」を挙げています。要件定義やプロジェクト推進の経験を、上流的・構造的な言葉に置き換えて伝える、という趣旨です。
これ自体は間違いではないのですが、実際に選考を通過してみて振り返ると、この助言だけでは説明しきれない部分がありました。
面接で実際に評価されたと感じたのは、きれいに言語化されたスキルの棚卸しよりも、「正解」を提示するのではなく自分なりの仮説を持って考えを話せたこと、そしてSIer時代に感じていた「自社の利益と顧客の本当の利益が必ずしも一致しない」という葛藤を、取り繕わずに素直に語れたことでした。テクニックとしての言語化よりも、迷いや矛盾を含んだ本音のほうが、面接官には響いていたように思います。
SIer時代の技術経験は、強みにも弱みにもなる
SIerでの技術・実装経験は、コンサルの選考で「机上の空論を語らない、地に足のついた提案ができる」という強みとして評価される場面があります。一方で、同じ経験が「視座が低い」「技術寄りの発想から抜け出せていない」と見なされる場面もあり、この二面性は実際に選考を受けてみるまで実感しにくいものでした。
職務経歴書を書く段階では、この経験をどちらの文脈で語るべきか何度も迷いました。技術的な詳細を積み上げて語るほど「詳細主義」に見られるリスクが上がり、逆に抽象化しすぎると経験の裏付けが薄く見えるというバランスの難しさは、「言語化しましょう」という一言だけでは埋まらない、実務的な悩みでした。
ファーム選び、技術を活かせる環境か、幅広い案件に携われる環境かで悩んだ本音
ファーム選びについては、技術力を活かしやすくSIer出身者の採用実績も多いタイプのファームと、業界を問わず幅広い大規模案件に携われるタイプのファームという大きな分け方が、エージェント記事でもよく紹介されています。頭では理解していても、実際にどちらを選ぶかを決める段階になると、想像以上に迷いました。
技術を活かせる環境の方が自分の強みを発揮しやすいはずだと分かっていながら、同時に「特定の技術や製品に縛られない環境で通用する自分になりたい」という気持ちも捨てきれず、選考を並行して受けながら何度も気持ちが揺れました。比較表で整理された「向き不向き」ほど、実際の意思決定はすっきり進まないというのが正直な実感です。
ケース面接、対策すればするほど「正解」を探しに行ってしまった
選考対策として、ケース面接の想定問答集やフレームワークを一通り頭に入れて臨んだのですが、本番の面接では思うようにいきませんでした。事前に覚えたフレームワークをなぞろうとするあまり、面接官が本当に見たかった「その場での考える過程」よりも、どこかに存在するはずの「正解」を探しに行ってしまう癖が抜けなかったのです。
これはSIer時代、方向性がある程度決まった前提で詳細を詰めていく仕事に慣れていたことの裏返しだったのだと、後になって気づきました。対策すればするほど「型通りの正解」に寄っていってしまい、逆に自分なりの仮説を素朴に話す練習の方が本番では効いたというのは、対策本だけを読んでいた頃には想像していなかった感覚です。
何度か模擬面接を重ねる中で、間違っていてもいいから自分の考えを言い切る練習を意識的に増やしたことで、ようやく本番でも落ち着いて話せるようになりました。
年収相場のリアルと、実際に上がるまでの不安
年収については、エージェント各社の公開情報によると、SIerからコンサルへの転職では概ね500万円台後半〜700万円台程度が相場とされ、PMとしての実績を積んだ層では、その後30代後半で四桁(1,000万円台)に届くケースもあると紹介されています。この数字自体は、自分の実感とも大きくは離れていません。
ただ、内定を受け取るまでの間は、この数字が本当に自分に当てはまるのか、正直なところ半信半疑でした。提示年収が固まるまでは「相場」と「自分の実際の評価額」が本当に一致するのか分からない不安がずっとつきまとい、最終的なオファー面談で条件を聞くまで落ち着かなかったというのが、数字の裏側にある実感です。
【ガイド】転職の段階別に、次に読むべき記事
この記事は、SIerからITコンサルへの転職全体の流れをまとめた総合ガイドです。今どの段階にいるかに合わせて、それぞれ詳しく書いた記事へ進んでください。
まだ迷っている段階
- 決意するまでの心境の変化: 情報収集レベルから本気になった過程
- 決断する直前の迷い・葛藤: 決める前に何に悩み、どう向き合ったか
- 年齢的に遅いのか(30代・40代): 動く早さで何が変わるかの実体験
- 家族への切り出し方: 不安の中身を分解して伝えた方法
- SIer業界内で転職するか、コンサルへ越境するか: 選択の分かれ目
選考に進む段階
- 選考の総まとめ: 実際に何が起きたかの全体像
- 職務経歴書で落ちた話: 書き方の根本的な勘違いと直し方
- ケース面接での失敗: 「正解」を探しにいってしまった場面
- 良いエージェントの見極め方: 当たり外れの見分け方
ファームを選ぶ段階
- 業務内容より企業文化: 複数ファームを比較して分かったこと
- 良いファームの見分け方: 定着率・オンボーディング体制から
- 英語力は必須か: 外資系・グローバルファームの実態
- 社内コンサル部門への誘い: 「立場の独立性」で外部を選んだ理由
入社後、そしてその先
- 入社後ギャップの総まとめ: 視座・評価軸・職場文化のギャップ
- 年収の変化のリアル: 相場と、実際の手取りの感覚
- 1年後の振り返り: あの決断は正しかったか
- コンサルの次の選択肢: 事業会社という道
スキル・資格についてはITコンサルで求められるスキル・資格の総まとめ、転職前のSIer時代の悩みについてはコンサル転職前のSIer時代の総まとめにまとめています。ここに載せきれなかった記事はキャリアパスカテゴリの一覧から読めます。
まとめ:SIer経験を持つ自分をどう扱うか
経験の活かし方、ファーム選び、年収相場と、それぞれのテーマにはエージェント各社がすでに詳しい情報を出しています。それでも実際に転職を経験してみると、テクニックとしての「言語化」以上に、SIer時代に感じていた葛藤や迷いをそのまま言葉にできるかどうかが、選考でもファーム選びでも、年収交渉の場面でも、地味に効いてくるという感覚がありました。
この転職で特に痛感した「視座の違い」については、別記事「詳細を詰める仕事」から「方向性を決める仕事」へ|SIerとコンサルの本質的な視座の違いで詳しく整理しています。また、実際に転職を決断する直前に感じた迷いについては、ITコンサルへの転職を決断する直前、本当にこれでいいのか迷った話にまとめています。
あわせて読んでいただけると、この記事だけでは触れきれなかった実感の部分がより伝わるはずです。
ファーム選びや選考対策を個別に相談したい方は、こちらもあわせてチェックしてみてください。


