コンサルに転職して数ヶ月経った頃、上司との面談で「SIer時代の経験、思っていたより役に立ってないね」と言われたことがあります。正直、内心では「そんなはずはない」と反発する気持ちもありました。ただ、そこから改めて自分の中でスキルを棚卸ししてみると、たしかに評価が下がったものと、逆に予想以上に重宝されたものが、はっきり分かれていることに気づきました。
今回は、SIer(システムエンジニア)からITコンサルへ転職した一人称の実体験として、「コンサルで通用しなかったスキル」と「逆に活きたスキル」を、できるだけ具体的に書いてみたいと思います。単なる〇〇選のリストではなく、なぜそのスキルが通用した・しなかったのかという理由まで含めて掘り下げます。転職を検討している方が、自分の経験をどう棚卸しすればいいかの参考になればと思います。
この記事でわかること
- SIer時代のスキルのうち、コンサルで通用しなかったもの3つ
- 逆に、予想以上に活きたスキルとその理由
- 通用するかどうかを分けていた「スキルの使い方の向き」
SIer時代に評価されていたスキルを、まず正直に棚卸しする
SIer時代、自分が評価されていたと感じていたのは、大きく分けて3つでした。ひとつは、要件を細部まで詰め切る設計力。もうひとつは、仕様書や手順書を漏れなく作り込むドキュメンテーション力。そして、決められたスケジュール・予算の中で着実にプロジェクトを進行させる管理力です。
これらは、上流から降りてきた方針を前提に、いかに正確に・漏れなく実現するかという、いわば「積み上げ型」の仕事の進め方で磨かれたスキルだったと今では思います。当時はこれが仕事のできる・できないを分ける唯一の軸だと信じていました。
コンサルに来て「通用しなかった」と痛感したスキル
転職して最初にぶつかったのは、資料作成でした。SIer時代の癖のまま、検討した内容をすべてスライドに詰め込んでいたところ、「結局何が言いたいスライドなのか分からない」とダメ出しを受けました。情報量の多さは丁寧さの証明ではなく、むしろメッセージを曇らせる要因になると知ったのは、この時が初めてでした。
もうひとつ通用しなかったのが、提案の「拠り所」の作り方です。SIer時代は、自社の得意な製品・技術に寄せて比較検討を組み立てることに、正直あまり違和感がありませんでした。ところがコンサルでは、特定の製品・技術に縛られず、利害関係を排してフラットに評価することが前提になります。「自社の売りたいものに寄せない」評価軸への転換そのものが、思っていた以上に難しい作業でした。
3つ目は、仕事の進め方そのものです。SIer時代は、方向性が決まった後の詳細検討が仕事の中心でした。一方コンサルでは、方向性そのものを自分の仮説で決めにいく場面が多く、「指示を待つ」姿勢が抜けきらないうちは、会議で意見を求められても答えに詰まることが何度もありました。
正直に言うと、この3つを突きつけられた当初は、自分のキャリアそのものを否定されたような気持ちになりました。それまで評価されてきた仕事の仕方が、環境を変えただけで一気に通用しなくなる感覚は、想像していたよりもこたえるものでした。
通用しなかったスキル3つ
- 検討内容をすべて詰め込む資料作成(メッセージが曇る)
- 自社の売りたいものに寄せた提案の拠り所づくり
- 方向性が決まってから詳細を詰める、指示待ちの進め方
逆に「思っていた以上に活きた」スキル
一方で、想像以上に武器になったスキルもあります。ひとつは、SIer時代の顧客折衝・要件調整の経験です。あいまいな要望を具体的な仕様に落とし込む作業を繰り返してきた経験は、クライアントの漠然とした課題を構造化して整理する力として、そのまま転用できました。
もうひとつは、技術への理解そのものです。コンサルには自分と同じSIer出身者だけでなく、事業会社や金融、コンサル以外のプロフェッショナルファームなど、実にさまざまな業界・職種から人が集まってきます。そのため、同僚の中には技術領域への深い知見を持たない人も少なくありません。
結果として、SIer時代に培った技術への理解や、その頃に取った資格が、「技術が分かるコンサルタント」として重宝される場面が何度もありました。これは、技術力そのものが評価されたというより、周囲の出身が多様だからこそ、技術に強いことが相対的な希少価値になっていたという方が正確だと思います。この「なぜ武器になるのか」という理由まで含めて語られることは、あまり多くない気がしています。
実際、クライアントとの折衝の場では、SIer時代に鍛えられた「あいまいな要望を、具体的に何を指しているのか一つずつ確認しながら詰めていく」進め方が、そのままコンサルでの課題整理にも役立ちました。技術に強いこと自体が武器になる場面と、調整の型が武器になる場面、両方があったというのが実感です。
活きたスキル2つ
- 顧客折衝・要件調整の経験(あいまいな課題を構造化して整理する力に転用できた)
- 技術への理解や取得済みの資格(周囲の出身が多様なため「技術が分かるコンサルタント」として重宝された)
「通用する・しない」を分けていたのは、スキルの中身より使い方だった
ここまで書いてきて改めて思うのは、SIer時代のスキルが丸ごと通用しなかったわけでも、丸ごと活きたわけでもないということです。同じ「詳細を詰める力」でも、資料に情報を詰め込む方向に使えば裏目に出ましたが、クライアントの要望を具体的な仕様に落とし込む方向に使えば強みになりました。
つまり分かれ目は、スキルそのものの優劣ではなく、そのスキルを「積み上げる方向」で使うか、「フラットに評価する・構造化する」方向で使うかという、使い方の向きの違いだったのだと思います。この視点を持てるかどうかで、同じ経験の棚卸しでも見え方がずいぶん変わってきます。
この「詳細を詰める仕事」から「方向性を決める仕事」への転換そのものについては、「詳細を詰める仕事」から「方向性を決める仕事」へ|SIerとコンサルの本質的な視座の違いでさらに掘り下げて書いていますし、資料作成で実際にダメ出しを受けた経験と克服の過程はコンサル転職後、資料作成・議論についていけなかった私が克服のためにやったこと5つにまとめています。あわせて読んでいただくと、今回の話がより立体的に伝わるかと思います。
自分の経験のどの部分が「積み上げ型」で、どの部分が「構造化・フラット評価型」に転用できそうか、一人で棚卸しするのは意外と難しいものです。コンサルで評価されやすい思考の型を体系立てて補強したいという方は、オンライン講座で、ロジカルシンキングや構造化のスキルを体系立てて学んでみるのも、選択肢のひとつとしておすすめです。


