ITコンサルタントとして働き始めてから数ヶ月ほど、夜になると決まって同じ問いが頭に浮かぶ時期がありました。「自分は本当にここで価値を出せているのだろうか」という問いです。SIer(システムエンジニア)時代には感じたことのなかった種類の不安で、最初のうちは自分でもうまく言葉にできませんでした。
「コンサル 転職 後悔」といったキーワードで検索すると、コンサル経験者や現役の面接官の方が書いた記事もいくつか見つかります。ただそれらの多くは、選考段階で候補者が見落としがちな視点についての解説が中心で、入社してからしばらく続く「自分の評価に対する不安そのもの」を、時間の経過とともにどう受け止め、どう抜け出したかまで書いたものは、探した限りではあまり見当たりませんでした。この記事では、その抜け落ちがちな部分を、自分の一次体験で埋めていきたいと思います。
この記事でわかること
- SIer時代とコンサルで「評価される物差し」がどう変わるのか
- 入社後しばらく続く自己評価への不安の正体
- 不安から抜け出すために実際にやった、地味だが効く3つの行動
SIer時代にあった「わかりやすい物差し」
SIerでSE・PMとして働いていた頃は、担当したシステムが期限通りにリリースできたか、発生した障害を収束させられたか、といった比較的客観的な物差しで自分の仕事ぶりを測ることができました。
もちろん評価の場には人間関係や年次といった要素も絡んできます。それでも「動いているかどうか」「決められた期限に間に合ったかどうか」という技術的な事実は、自分から見ても周囲から見ても分かりやすいものでした。困ったときは、その事実を根拠に説明すればよかったのです。当時は、この物差しの分かりやすさが、いかにありがたいものだったかにまったく気づいていませんでした。
物差しがないことに気づいた面談
コンサルに転職して数ヶ月経った頃、上長から今期の振り返りについてフィードバックをもらう面談がありました。指摘の内容自体は前向きなものでしたが、その場で返す言葉に詰まった自分に気づきました。
「このプロジェクトでどれだけ価値を出せたと思うか」と問われたとき、SIer時代のように「ここまで作った」「この障害を収束させた」という事実で答える材料が、うまく見つからなかったのです。技術的な成果物という分かりやすい物差しがない中で、自分の貢献をどう言葉にすればいいのか分からなくなったのが、この不安の始まりだったと思います。
半年近く続いた「ここにいていいのか」という感覚
その面談以降、月次の振り返りのたびに同じ感覚が顔を出すようになりました。表向きは普通に業務をこなしているのに、心のどこかで「自分はまだこの場所に見合っていないのではないか」と考えている時期が、体感で半年ほど続きました。
今振り返ると、この背景にはSIer時代の「自社の都合に寄りやすい評価」から、コンサルの「利害関係を排したフラットな評価」への転換の難しさがあったのだと思います。評価される軸そのものが変わったことに、まだ自分の考え方が追いついていなかったのです。この視座の違いについては、「詳細を詰める仕事」から「方向性を決める仕事」へ|SIerとコンサルの本質的な視座の違いという記事でも詳しく書いています。
抜け出すきっかけになった、地味な行動
この状態から抜け出すきっかけになったのは、大きな成功体験ではなく、地道な行動の積み重ねでした。
実際にやった3つのこと
- 上長に評価の基準そのものを率直に聞きに行く(「今期、自分に何を期待していたか」を具体的に確認する)
- その週・その案件でどんな判断をし、どんな提言をしたかを簡単にメモする習慣をつける
- 同じように悩んだ経験がありそうな先輩に、自分の状態をそのまま話してみる
「今期、自分に何を期待していたか」「どんな行動が評価につながるのか」を面談の場で具体的に聞くようにしたところ、漠然とした不安が、次に何をすればいいかという具体的な行動に変わっていきました。分からないまま抱え込むより、聞いてしまった方がずっと楽になれることに気づいたのです。
あわせて始めたメモの習慣は、振り返ったときに「意外と自分なりの判断をしている」と気づける材料になり、少しずつ自信を取り戻す助けになりました。
もう一つ助けになったのは、先輩に当時の自分の状態をそのまま話してみたことです。「最初の半年くらいは、みんな似たようなことを感じるものだ」と言われただけで、驚くほど気持ちが軽くなったのを覚えています。一人で抱え込まず、状態を言葉にして人に話すこと自体が、想像以上に効果のある対処法でした。
同じような不安は、決して珍しくないと思う理由
後から同僚と話していて気づいたのですが、この手の不安を抱えていたのは自分だけではありませんでした。SIer時代のように「黙々とやっていれば、いずれ誰かが見ていてくれる」という感覚のままコンサルに来ると、同じようなつまずき方をする人が一定数いるようです。
コンサルの評価基準は、曖昧なように見えて、実はSIer時代の年功序列的な仕組みより明確に定められていることが多いというのも、後になって分かったことでした。ただし、その基準に対して自分から成果や判断の背景を発信していかないと、なかなか正当に評価されにくいという、姿勢面の違いがあります。受け身のままでいると、基準が明確な分だけ、かえって不安が長引きやすいのかもしれません。
今、あの頃の自分に伝えたいこと
今振り返ると、あの半年間の不安は、能力が足りなかったからというより、評価される軸そのものが変わったことに、体がまだ慣れていなかっただけだったのだと思います。SIer時代とコンサルとでは、そもそも「良い仕事」を測るものさしが違うのですから、戸惑って当然だったのです。
これからコンサルへ移る方も、入社後にこうした不安を感じる可能性があります。それは自分だけの弱さではなく、SIerからコンサルへ移った多くの人が通る、視座の転換の途中にあるサインです。事前に知っておくだけで、心構えは大きく変わるはずです。入社後のギャップについては、他にも複数の切り口でまとめていますので、SIerからITコンサルへ転職して味わった入社後ギャップ、感じたことを全部書くもあわせて読んでみてください。
ロジカルシンキングや資料作成など、コンサルで求められる考え方を体系的に学び直したいという方は、まず自分のペースでオンライン講座で学んでみるのも一つの方法だと思います。転職を決めていない段階でも、無理なく始められるはずです。


