退職面談で「うちにもコンサル部門があるよ」と言われた話|SIer内コンサルを選ばなかった理由

退職の意向を伝える面談で上司と向き合うビジネスパーソン キャリアパス

「転職することにしました」と上司に伝えたとき、返ってきたのは強い引き止めでも、あっさりした承諾でもありませんでした。「うちの会社にも、実はコンサルティング部門があるんだけど、そっちに異動してみない?」という、少し意外な提案です。

この記事では、SIer(システムエンジニア)としてキャリアを積み、その後ITコンサルタントへ転職した私が、退職面談で受けたこの提案について、検討した上でなぜ断り、社外のコンサルティングファームを選んだのかを書きます。SIerからコンサルへの転職を扱う記事は数多くありますが、「社内にもコンサル部門があるのに、なぜわざわざ転職するのか」という問いに、一次体験から答えている記事はあまり見かけません。

この記事でわかること

  • SIer各社で「社内コンサル部門」が増えている背景
  • 社内コンサルと社外ファームで何が根本的に違うのか
  • 社内異動を提案されたときに確認すべきチェックポイント

「うちにもコンサル部門があるよ」と言われた瞬間

退職の意向を伝えた面談の場で、上司から出てきたのは強い引き止めの言葉ではありませんでした。むしろ穏やかに、「もったいないから、社内のコンサルティング部門への異動を考えてみてはどうか」という提案でした。

正直なところ、一瞬「それも悪くないかもしれない」と心が揺れました。環境を大きく変えずに、肩書きだけ「コンサルタント」に近づけられるのであれば、リスクは小さいように思えたからです。その場ではすぐに答えを出さず、少し考える時間をもらうことにしました。

SIer各社が「コンサル部門」を新設する動きが増えている

後から知ったことですが、こうした社内コンサル部門の新設は、私がいた会社に限った話ではないようです。SIer各社が自社内に「コンサルティング部門」「DXコンサル部門」といった組織を新たに立ち上げるケースは、業界全体で増えている実感があります。上流工程を自社で囲い込みたいという会社側の狙いもあるのだと思います。

表向きの肩書きだけを見れば、外部のコンサルティングファームへ転職するのと、社内のコンサル部門へ異動するのは、似たような選択に見えるかもしれません。しかし肩書きが「コンサルタント」に変わるからといって、仕事の中身や立場までが自動的に変わるわけではない、ということに、当時の私はまだ気づいていませんでした。

実際に社内コンサル部門へ異動した人にも話を聞いてみた

迷いがあったので、面談の後、社内のコンサルティング部門にいる知人に、実際の仕事の様子を聞いてみることにしました。案件によっては純粋に上流の企画・提案から関わることもあるそうですが、最終的な提案には自社の開発体制や既存の製品・サービスを組み込む前提が、暗黙のうちに敷かれている場面が多いという話でした。

これは知人の努力不足という話ではなく、組織として自然にそうなってしまう構造の問題だと感じました。顧客にとって本当に最適な選択肢が、必ずしも自社の売り物と一致するとは限りません。その時にどちらを優先するかという判断が常について回る立場である以上、私が求めていた「フラットな提案」からは、少し距離があるように思えたのです。

それでも外部を選んだ理由は、「立場の独立性」でした

数日かけて考えた末に出した結論は、「社内のコンサル部門は、結局のところSIerという組織の一部でしかない」というものでした。組織の内側にいる以上、自社のサービスや得意な製品・技術を推すスタンスから、完全に脱却することはできないだろうと感じたのです。

これは、社内コンサル部門で働く人たちの努力や専門性を否定する話ではありません。ただ、私が転職で実現したかったのは、特定の製品や技術に縛られず、顧客にとって本当に良い選択肢をフラットに検討できる立場そのものでした。組織構造として自社の利害が絡む場所にいる限り、その前提そのものが崩れてしまうと考えました。

異動先の上司からは「中から変えていくという道もある」とも言われました。その言葉に説得力を感じなかったわけではありませんが、自分一人が意識を変えたところで、会社全体の収益構造や評価の仕組みまでは変えられません。であれば、最初から利害関係のない立場に身を置く方が、自分の求める働き方に早くたどり着けると判断しました。

SIer時代に抱えていた葛藤の延長線上にあった判断

この判断の背景には、SIer(システムエンジニア)時代から抱えていた葛藤がありました。受託開発というビジネスモデルの構造上、自社の利益を優先せざるを得ない場面があり、本当に顧客の悩みに寄り添えているのか分からなくなることが度々あったのです。

社内コンサル部門という選択肢は、一見するとこの葛藤を同じ会社に居ながら解消できそうに見えました。しかし考えるほどに、看板を「コンサル」に変えるだけでは、この構造的な葛藤そのものは解決しないという結論に行き着きました。SIer業界に残るかコンサルへ越境するか、という選択そのものについては、SIer業界内で転職するか、コンサルへ越境するか、どちらを選ぶべきかでも詳しく書いています。

社内コンサルが必ずしも「同じ」とは限らない

ここまで社内コンサル部門を選ばなかった理由を書いてきましたが、すべての社内コンサル部門が同じ性質を持つとは限らないとも思っています。会社の規模や事業構成によっては、自社サービスの提案から意図的に切り離された、独立性の高い組織設計をしているケースもあるかもしれません。

社内異動を提案されたら確認すべきこと

  • 提案の最終判断に、自社の開発体制・製品・サービスを組み込む前提が暗黙にないか
  • 顧客にとっての最適解と自社の利害が対立した場合、どちらを優先する立場なのか
  • 「コンサル」という肩書きの変化と、実際の仕事の立場の変化が本当にイコールか

「コンサル」という肩書きだけで判断せず、実際にどこまで自社の利害から独立して提案できる立場なのかを具体的に確認してみることをおすすめします。私自身は、その確認を面談の場で十分にできなかったことも、外部を選んだ判断材料の一つでした。

この経験から伝えたいこと

退職を伝えた瞬間に代替案を提示されると、心が揺れるのは自然なことだと思います。それでも一度立ち止まって、「肩書きの変化」と「立場の変化」が本当にイコールなのかを、自分の言葉で考え直してみる価値はあります。

SIerからコンサルへの転職全体を見渡したい方は、SIer(システムエンジニア)からITコンサルへ転職した私が、経験の活かし方・選考対策・年収相場をすべて書くもあわせて読んでみてください。

社内異動という選択肢も含めて、自分のキャリアを客観的に整理したい場合は、首都圏勤務・20代後半〜30代前半が対象にはなりますが、IT・コンサル領域を含め幅広い求人を扱う転職エージェントに相談してみるのも一つの方法だと思います。社内の人間関係の中だけで判断するより、外部の視点を入れた方が見えてくるものは多いはずです。

タクマ

SIer(システムインテグレーター)でSE・プロジェクトマネージャーを経験したのち、IT/業務系コンサルティングファームへ転職。業界横断のプロジェクトに携わりながら、転職の実体験や入社後のギャップを発信しています。プライバシー保護のため、所属企業名・案件名など特定につながる情報は伏せています。

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