結論から言うと、コンサル業界で中途入社した自分より年下の上司につくことは、決して珍しいケースではありません。むしろ、この業界の昇進の仕組みを知れば知るほど、「起きて当然のこと」だったと今なら分かります。ただし、それを頭で理解しているのと、実際に自分がその場に立った時に気まずさを感じないのとは、まったく別の話でした。
「コンサル 転職 年下 上司」で検索すると、年齢に関係なく謙虚な姿勢を持とうという心構え系の記事や、コンサル業界では中途入社の年齢と役職が逆転しやすいという構造を説明する記事が見つかります。ただ、そのほとんどは業界にすでにいる人向けの一般的な心得にとどまっていて、SIer(システムエンジニア)時代の「年次を重ねれば裁量も自然に増えていく」という感覚を長く持っていた人が、なぜこの逆転に特にひっかかりやすいのか、その構造まで踏み込んだものはあまり見かけませんでした。今回はその戸惑いの正体と、実際にどう向き合ったかを書いてみます。
この記事でわかること
- SIer時代の年次感覚が、コンサルでなぜ通用しなくなるのか
- 年下の上司との間で具体的にどんな場面に戸惑ったか
- 気まずさをどう乗り越えて、今の向き合い方に落ち着いたか
「年次を重ねれば偉くなる」感覚が、そもそも成り立たない世界だった
SIerでSEからPMまで10年近く経験してから転職した身としては、正直なところ「年次が上がれば、それなりの立場になっていく」という感覚が体に染みついていました。もちろんSIer時代にも実力主義の側面はありましたが、少なくとも同期・同年代の中での序列は、大きく崩れることは少なかったように思います。
ところがコンサルに入ってすぐ気づいたのは、新卒からこの業界で育った人は、早ければ20代のうちにマネージャー相当のグレードまで駆け上がっていくということでした。一方で中途入社の場合、これまでの実務経験は評価されるものの、コンサルというビジネスの型に慣れるまでは、それとは別軸でグレードが決まります。結果として、社会人経験の長さでは自分の方が上でも、社内のグレード(等級)では相手の方が上、という状況が普通に起こります。
これは誰かが不当に優遇されているとか、逆に自分が不当に低く見られているという話ではありません。年次と裁量が比例して増えていくSIer時代の前提そのものが、コンサルという業界には最初から存在しない、というだけのことでした。頭では理解していても、いざ自分の直属の上司が明らかに自分より若いと分かった瞬間、正直なところ小さくない動揺がありました。
具体的にどんな場面で「ねじれ」を実感したか
一番最初に実感したのは、案件にアサインされた初日、あいさつを兼ねた顔合わせの場でした。名刺交換をした瞬間、相手の入社年次や経歴の話から、自分より年下であることがなんとなく伝わってきて、内心「あ、この人が自分の上司なのか」と一瞬固まってしまったのを覚えています。
その後も、資料のレビューで細かく指摘を受けたり、進め方について明確にダメ出しをされたりする場面が続きました。指摘の内容自体は的確で、感情的にこじれるようなことは一度もありませんでした。それでも「自分より社会人経験の浅い相手から、仕事のやり方そのものを教わっている」という事実に、素直に納得しきれない瞬間が何度かありました。評価面談を担当するのが年下のマネージャーだったときも、同じような複雑な気持ちになったことを覚えています。
厄介だったのは、この気まずさが表に出せない種類のものだったことです。「年下だから素直に指示を聞けない」などと口に出せば、それこそ古い価値観に固執した扱いにくい中途社員だと思われかねません。誰にも相談しづらいまま、一人でモヤモヤを抱えている時期が続きました。
周囲の同僚に少しずつ話を聞いてみると、似たような戸惑いを抱えていたのは自分だけではありませんでした。特に、SIer(システムエンジニア)や事業会社で長く実務を積んでから中途入社した人ほど、この「年次と役職のねじれ」に最初は面食らったという声を複数聞きました。逆に言えば、事前に「これは自分だけの特殊な事情ではなく、構造的に起きるもの」だと知っておけるかどうかで、受け止め方はかなり変わるはずだと感じています。
気まずさと折り合いをつけるためにやったこと3つ
- 「年齢」ではなく「経験している論点の数」で相手を見るようにした。年齢は自分より下でも、コンサルとしての場数(答えのない論点への向き合い方)では相手の方が圧倒的に多いという事実に、意識して目を向けるようにしました。
- 肩書き・年次への言及を自分からしないようにした。「歳は自分の方が上ですが」といった前置きは一切せず、単純に一人の同僚・上司として接することを徹底しました。これだけで、相手側も余計な気を遣わずに済んだようです。
- SIer時代に培った実務知見を、教える立場として提供する場面を自分から作った。案件内で自分の方が詳しい技術領域・業界知識があるときは、遠慮せずに共有するようにしました。上下関係とは別に「頼れる相手」として認識してもらえることが、気まずさを和らげる一番の近道でした。
グレードのねじれは、もっと早く動いていれば避けられた可能性もある
振り返ってみると、このねじれをどれくらい大きく感じるかは、転職したタイミングにも左右される部分が大きいと感じています。同じ実務経験年数でも、もう数年早く動いていれば、入社時点のグレードはもう少し違った可能性があります。
実際、自分より社会人経験が浅い同僚が、入社時点で自分と同じグレードだったという話は、以前の記事でも触れました。年齢・年次と社内グレードの関係は、SIer時代の感覚のままでいると想像以上にねじれる、ということは、転職を考え始めた早い段階で知っておいて損はないと思います。
入社後に感じるギャップは、この年下上司の件に限りません。入社後ギャップ全般をまとめた記事もあわせて読んでおくと、心構えの幅がさらに広がるはずです。
終わりに
年下の上司につくこと自体は、悪いことでも恥ずかしいことでもありません。問題があるとすれば、それを「異常なこと」だと感じてしまう、SIer時代からの年次感覚の方なのだと、今は思っています。
まだ転職を決めていない段階でも、こうしたグレードと年齢の関係をあらかじめ知っておくだけで、入社後に受ける衝撃はかなり和らげられます。転職を決めていない今のうちから、気になる領域についてオンライン講座を覗いてみるところから始めてみるのも、一つの準備の仕方だと思います。


